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再会。




出張先での仕事が終わった。

携帯電話を開いてみると、ゆき乃からのメールがひっそりと残っている。
“四条の橋でお待ちしています”そして最後に小さな赤いハートの絵文字が添えられている、少し仕事の疲れを忘れたような気がしてしまうのが不思議だ。
ミーハーな奴だと笑うなら笑えばよいさ。

五条烏丸からタクシーを拾い四条大橋の袂で降り、橋も半ばに差し掛かると其処で月を見上げるように彼女は待っていた。


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今年一番の冷え込みとなった夜、彼女は和装のたたずまいの上に渋い萌黄色のショールを掛け 橋の中央に背を向けるような月を眺めている。
観光客たちが横目で彼女をみながら無言で通り過ぎて行く。


「ごめん、今年も待たせてしまったな。」
そんな言葉が一年ぶりの再開の始まりとは、我ながら情け無くなってしまうのだが出てしまったモノは仕方が無い。
「いそのさん、今年は遅かったですね、紅葉は散り始めてしまいましたよ。今年は寒くなるのが早かったですから・・」
と、悪戯っぽく笑い、私のマフラーの結びを直し左腕に手をまわし、此方を見上げもう一度笑った。
「お腹空いたぁ~ なにか食べません?」


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四条大橋のたもとにある菊水は大正5年の創業、建物は国登録文化財に指定された京都の老舗洋食レストランであり、そのレトロなたたずまいは現在でも私達の眼を楽しませてくれている。←

入口をはいり直ぐのカウンターで、二階のフレンチグリルでの食事の希望を年配の女性につげると、エレベーターに案内してくれる。 背後で二階に2名の来客をインターホォンで告げる声が小さく聞こえた。。

二階奥のテーブルに通されたが、これは悪くない席に思える。

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ゆき乃は、白ワインをボトルで頼もうとする私に、
「今日はごはんたべしてから、ゆっくり清水さんまであるきませんか?」
とヤンワリとたしなめる様にささやく。

仕方がない、グラスで頼む事にしよう。

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先ずはアミューズ。
そして六品ほどあるなかから二品の前菜が選べる。

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シーフードカクテル、ウニ○○と読めた、老眼鏡を忘れたのが少し悔やまれたな。

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牡蛎のグラタン。

「シーフードカクテルと書いてあったから、てっきりカクテルソースかと思ったのだが。。。」
とぼやく私を笑いながら、
「牡蛎のグラタンはヌシさんという方を想い出しながらたのまれたんでしょ?」←
と悪戯ぽい眼を投げかけてきた、これは的を射てる。
少々悔しくもあり何も言い返さず、空になったグラスを少し持ち上げ店員に二杯目を注ぐことを促した。
不利な状況は黙っているに限るだろう。

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やはりどう考えてもホワイトソース系に偏ってしまった選択が悔やまれてならない。
目の前で美味しそうに食べている彼女の姿が一層にそんなつまらない想いに拍車をかけてくるのだが、とうの本人はいたって楽しそうにしている。

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冷製の伊勢エビ

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このプリンが美味かったな、ソースを絡めないとまるで卵焼きか?と思うほどしっかりしていた。
「にっき先生なら、きっと“侠気プリン”なんて仰いそうですね♪」←
などと屈託無く話す彼女の話に耳を傾けながら、最後の一口になったコーヒーを啜った。
悪くない味だ。



「いそのさん、清水さんに行く道 “石堀小路”ってご存知です?」
そんなゆき乃の言葉に促されて、少し遠回りな道を清水寺まで歩くことにした。

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喧騒から離れた京都の静かなたたずまいが、此の路には残っている。

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私達は石畳を、ひとつひとつ数えるかの様にゆっくりと歩いた、まだまだ清水寺の閉門時間には早い。








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2012-12-01 : 旅で出会った美味しいもの。 : コメント : 15 : トラックバック : 0 :
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非公開コメント

あれ?
ゆき乃さんって、京都弁でしゃべらないんですか。
2012-12-02 07:58 : 酔華 URL : 編集
京都弁
酔華さまぁ~ ソコを突っ込んでは (笑)

2012-12-02 08:18 : 小径のヌシ(^-^) URL : 編集
>酔華さん
>小径のヌシさん

京都弁って文字にするのが難しいです。
平仮名を多用する事で問題を解決しようと試みていますが、足りない部分は脳内変換をお願い致します。
m(__)m
2012-12-02 08:29 : いその爺 URL : 編集
山さんからの伝言
苗字で呼ばれているうちはまだまだ・・・。
と、うちの山さんが申しております。
「磯さん(京ことばのアクセントで)」と呼ばれてそのうち、下の名前で呼ばれて、さらに名前なんかよばなくても良い関係になったら・・・・。
うふふふ。

牡蠣のグラタンが・・・・・・・・・。
ああ、今日もまた牡蠣熱が上がってしまった!
2012-12-02 08:59 : にっき URL : 編集
あっゆき乃さんやぁ(笑)京都弁に変換して読ませていただいております。カテゴリーにまとめません?ふっと読み返したい時があります。
2012-12-02 09:29 : oga URL : 編集
おお 久々にゆき乃さんだあ-
私もこんな夢見て見たいもんだな~
2012-12-02 14:54 : EGUTI YOUSUKE URL : 編集
今晩は まごまごして仕舞いますよ。
良いな~。私も誰かとデートしたいと思えば夢を見ることが出来るかしら。手を握られてオヤ?皺々だなんて言われそう。
2012-12-02 18:55 : 相子 URL : 編集
これは。。。
そうですよね

男の人っていつまでもロマンを求めているのですね
女の人よりも ロマンチストですよね

最初はほんとの話かと思ったけど。。。

なかなかのものです
2012-12-02 19:11 : maman URL : 編集
よろしおすな
ゆき乃はんとご一緒やなんて・・・

どこかなって思ったら、あの南座の前の横断歩道
渡って直ぐのことろや、おへんか

ちょっと声かけてくれたら、飛んでいきましたのに
なに、邪魔やて・・・そやろな・・・ほな、ごゆっくり

わたいは錦市場で一人牡蠣食うときますよって・・・あははは
こりゃ大阪弁か???ヾ(´∇`)ノ゙


2012-12-02 21:43 : メタボ夫婦 URL : 編集
Re: 山さんからの伝言
>にっきさん

山さんに伝言をお願いします。

ゆき乃と私の間には、川が流れております。飛び越そうと思えば飛べそうな広さなのですが・・
いま一歩を踏み出せないのは、私の弱さと彼女の強さなのかもしれません。
ゆき乃が私を名前で呼ぶことは、おそらく生涯ないとおもいます。

先生! 牡蛎よりプリン! プリンが切り分けて出て来たのよ!(笑
2012-12-02 23:10 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
>ogaさん

二人の京都の思いでは、さらりと流れ埋もれてしまってよいのですよ。
ゆき乃もそれを望んでいるとおもいます。

脳内返還にご協力頂き感謝しています。京都弁って難しい!
2012-12-02 23:14 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
>EGUTI YOUSUKEさん

>私もこんな夢見て見たいもんだな~

求めなさい、心の底から求める事、すべては其処から始まります。
あ~  出張ぢゃ嫌だ! 遊びに行きたい!(笑
2012-12-02 23:16 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
>相子さま

手の皺?気にする事は全くありません。
妄想中の私のお腹はきりりと引き締まり、白髪は消えています。

にやけた顔も・・・・・・もちろん二枚目に変身してます。
2012-12-02 23:19 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
>mamanさん

あっ! 初めてでしたよね。
京都出張はフーテンの寅さんのオープニング的夢が恒例になっています。(笑

最近は夢と現の境目が・・・・・・解らない!(汗
2012-12-02 23:22 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
>メタボ会長

あっ!会長 流石お上手!
来年からの京都ネタ、ゆき乃の台詞は会長に変換してもらう事にいたします。(笑

2012-12-02 23:26 : いその爺 URL : 編集
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プロフィール

いその爺

Author:いその爺
横浜在住
五十路で早くも爺さんになちゃった。
“食”“写真”“郷土”が好きです。

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