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「再会2」 よもやの第二幕




清水寺 秋の特別拝観は多くの観光客を引きつける。
むろんライトアップされた紅葉の美しさを求めての事なのだ。

拝観料を払い、暫く階段を上ると大きく視界がひらけ、京都市内が一望できる。
青白く浮かび上がる京都タワーが何時も寂しそうに感じてしまうのは私だけなのだろうか・・

「いそのはん! こちらですよ!」
ゆき乃に腕をひかれ、紅葉を楽しむ人混みと反対方向へ歩んでいくと、そこには静かな参拝の場があった。


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二人ならび手を合わせた。今までの喧騒が嘘の様に静まり厳かな想いが満ちてくる。
暫くし眼を開けゆき乃の方ををみると、まだ彼女は手を合わせ祈りを続けていた、このまま時間は止まらないものかと ふと考えてしまった。


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「いそのはん、なにをお願いしていたんですか?」

「あ、うん、仕事の事だよ・・・・明日の仕事が上手く行くようにってね。」

「うふ・・・うそばっかり!」

たわいもない話が続く、それもまた楽しいものだ。


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土産物屋が続く参道を下り、公園をぬけ祇園にもどってくると、ふと「壹銭洋食」の看板が目に止まる。
“一銭洋食”というものは、大正時代 関西で水で溶いた小麦粉を焼いて、刻みネギなど乗せて焼いた物に、ソースをかけた物らしい。
駄菓子屋などで供され、後にお好み焼きの元になったそうである。

「一銭洋食って 食べた事が無いんだよなぁ」  と呟くと、
「一緒にたべまへんか?」と彼女は真顔で言う、少々驚いた、

「おいおい、君はこの辺りは知り合いも多いだろうから・・・」
「うふ、いそのはんと一緒なら、かましまへん!」と彼女は大いに乗る気になってしまった。
そうだな、祇園の通り、店先のベンチに座り駄菓子を頬張るのも楽しいかもしれない。

夜も更け客足も途絶えた「壹銭洋食」の前に行くと、店先のベンチに老人が一人座っているのが見えた。
仕立ての良さそうなコートをはおり、ハンチングを深く被り、襟を立て巻いているマフラーが渋い。
こんな歳の取り方をしたいものだと、横目で見ながら通り過ぎようとすると・・・
老人の横顔に目が止まったのだが、

「あっ! 先生! お久しぶりです。 横浜のいそのです。」
思わず直立し挨拶をしてしまった。  この御方・・偉い方なんだ。
老人はハンチングのつばを少し上げるような仕草をし、私を見上げ、
「おお、いそのか? いつ京都に来た?」
「本日です。」

「こんな所で一人でなにしてる?」と老人はいぶかしげに訪ねてきた。
「は?  一人・・・・?」
隣のゆき乃を思わずみると、彼女も此方を見、そして微笑みながら軽く片目をつぶった。
悪戯を思いついた子供のような仕草である。

「先生こそ、こんなところのベンチにお一人で座ってなにをしてるのですか?」

老人は少し照れたような笑いを浮かべ、
「あ、いや ちょっと人と待ち合わせだ・・・」

しまった、無粋な事を訪ねてしまったここは祇園なのである。
「失礼いたしました、またお会い出来るのを楽しみにしています。」
挨拶をすませその場を急いで離れる事にした、一銭洋食は諦めよう。

一人で四条大橋を渡り、先斗町を歩き突き当たりを曲がった所の餃子屋に入いり、カウンターに座り夜食代わりの餃子と生ビールを頼む。

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カウンターで独り生ビールを飲み、餃子を胃袋に詰め込む。五十路の疲れたオヤジには似合いすぎるロケーションだよな。
そう言えば、先生はそろそろ御茶屋のカウンターに座った頃であろうか・・・“あの店”良い店なんだよなぁ

宿に帰る道すがらに買った、ウヰスキー缶がビニール袋のなかでぶつかり合い侘びしい音を立てている。
ついさっきまで、なにか良い夢を見ていた気がするのだが、まぁ夢なんて覚めてしまえば忘れてしまうものなんだ。

また来年きっと良い夢をみさせてくれるさ、京都はなにかそんな不思議な力がある。



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2012-12-02 : 旅で出会った美味しいもの。 : コメント : 12 : トラックバック : 0 :
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ゆき乃さんとの再会。
このまま夜はどのように更けていくんでしょう?
・・・と思ったら、いつのまに一人で餃子?

京都出張が増えると良いですね。(ほほほ・・・)


2012-12-03 08:11 : daniel mama URL : 編集
方言
「もんじろう」に京都弁自動変換があります。
ご存知かもしれませんが、参考まで。
http://monjiro.net/

2012-12-03 08:44 : 酔華 URL : 編集
待ってましたっ!!! ゆき乃さん

あれ?もう夢さめたん?

私もカテゴリ「ゆき乃」をお願いしとうごじゃります
2012-12-03 13:42 : Lily姫 URL : 編集
[ゆき乃」さんいつの間にいない・・・

爺の情熱で淡雪のように融けてしまったのでしょう。

グラスにしないでボトルにしとけばもう少しつづいたかも。。。
2012-12-03 14:30 : kinchan60 URL : 編集
名文だ、ラッコさんもこのゆき乃さんて自分の事だと思って今度は京都ご一緒しますって言われたら直木賞取れるまでは我慢しなさいって言うでしょう(笑い

夜の京都もいいですね 宝くじ○億円当たりましたら
みんなで新年会ですね 買わなきゃ当たらないか
2012-12-03 18:13 : EGUTI YOUSUKE URL : 編集
そうですか
京都の時の恒例でしたか?
わたしはドキドキして読んでしまいましたよ
途中から 気がついたけどね (笑)

それはさておき お写真きれいですね
ほんと素敵です
2012-12-03 19:08 : maman URL : 編集
またまた
写真またまた頂きました(^○^)
2012-12-04 02:38 : 天使たちの場所 URL : 編集
お早うございます。清水寺の夜景も私のは(';')のような物です。
ほんと綺麗ですね。
餃子は足りましたか。
2012-12-04 11:22 : 相子 URL : 編集
>皆様へ

母が怪我をいたしまして、現在少々とりこんでいます。
一括の返信を御許しください。

良いゆめみていたら、しっぺ返しのような現実が襲って来ました。
まぁ 現ってモノは甘くありませんね。
出来ることなら、夢に逃げ込みたい気持ちです。(笑

落ち着きましたら、ご挨拶にうかがいます。m(__)m
2012-12-04 13:01 : いその爺 URL : 編集
その夢の続きは見れますか?
続編が楽しみです。
2012-12-04 14:35 : メタボ夫婦 URL : 編集
やっぱり
この季節 v-34 の京都の夜景は綺麗ですねぇ (〃⌒ー⌒〃)
こんな夜景を寄り添ぃながら眺めたら寒さなんて気にならない !!

ま、餃子の夜も 暖まりそぅですけどね (笑)
2012-12-05 07:46 : 小径のヌシ(^-^) URL : 編集
妙に不自然な京訛りのオチは
「ゆき乃」さんが実は「ミンミン」で雇われていた不法就労中国人って事でしょうか?
↓ご参考までに
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/121120/waf12112020250030-n1.htm
2012-12-06 12:02 : はってばって URL : 編集
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プロフィール

いその爺

Author:いその爺
横浜在住
五十路で早くも爺さんになちゃった。
“食”“写真”“郷土”が好きです。

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