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昭和七年、「うどんのトマト煮」はイタリアン的手法かな?ナポリタン歴史資料

“歴史は書きかえられる事を望んでいる。”

そんな言葉をブログを始めた頃から肝に銘じて過ごしてまいりました。
歴史を遡るには、文献記載が一番重要だと考えます。そして時代的な背景があり、真実に近づいていくと思うのです。
古川ロッパが昭和9年に、三越でナポリタンを食べたと日記に残した事は また新しい文献の発見により書き換えられる日があるのは、歴史自身が欲するところなのです。
出来る事であれば、“私達”は新しい文献記載を自らの手で探し、歴史が望む事に手を貸したいと思っています。

しかし その書き換える行為は“私達”が行わなくても良いのです。
同じ目的を持っている方が居れば、その人が行っても歴史自身にとっては、なんの問題は無いと思われます。
主体は歴史自身なのですよ。
そのため、私達は探し出した文献をネット上に載せ、興味ある方に自由に見て貰う事を選んでいるわけです。

しかし探しながら“書いている”のが事実であり、そのため推理に基づいて、文献を探さなければ星の数ほどある文献の中から欲するモノを探し出すのは困難なのも事実です。
歴史的背景からおこなった推理に基づいて文献をさがし、多くの点を地図上に打ち、最後に必然的な結果を導きだしたちと考えているのです。

そのために、結果を急いでいた過去に別れを告げて、暫くの間は捜索範囲を拡げた文献記載と、歴史背景を載せる事にいたしました。
多くの点を付ける事により、拙ブログ読者の方々とナポリタンの歴史探索を楽しめる事ができたら楽しかろうと、勝手な管理人の思いではありますが・・・・


さて本日は、昭和7年の「うどんのトマト煮」をご紹介いたしましょう。
似たようなメニューを何処かで見たような気がします・・・・・・笑  
現代の横浜で似たものが提供されているのが面白いですよ~ (笑


PC030343-2.jpg

昭和7年七月一日発行 主婦乃友(七月号)附録「お総菜向きの洋食の作り方三百種」

>  「うどんのトマト煮」

材料(三人前)干うどん一把、トマト三個、玉葱、大蒜極少量、盬、砂糖、バタまたは胡麻油等。

作り方 干うどんでなく、うどん屋から茹でたのを取れば、なほ簡単です。
(1)・・干うどんは、二寸くらゐにぽきぽき折つて、熱湯で固目に茹で、笊に上げて水気をきります。
(2)・・玉葱と大蒜もあつたら少々、みじん切りにし、フライ鍋に入れ、バタなり、胡麻油でいためます。それに、トマトを入れ、いためながら潰し、盬、砂糖少し、あつたら味の素も入れて、味を調へ、どろつとするくらゐ煮詰めて、うどんを入れ、焦げつかぬやうに煮込みます。
注意  うどんに、トマトの衣がかかつたといふ程度が美味しいのですから、トマトはかなり煮詰めてください。(古屋夫人)

< 以上

挿絵も付いていましたよ。


PC030357-2.jpg

このレシピの面白いところは、トマトソースを別に作っていない事、昭和初期には珍しく“大蒜(にんにく)が登場する事でしょうか?
フレッツシュトマトを玉葱&大蒜と炒め、煮ていくなんてチョイとイタリン風だと思ってしまいました。
当時 糖度の低かったであろうトマトに合わせて、砂糖を入れているところに苦労を感じてしまいます。

そうそう! 私の子供の頃ってトマトは結構すっぱくて、砂糖をかけて食べるお年寄りが存在しておりました。
後・・・・ウースターソースをかける人も居たなぁ

比較すると面白いので、既に紹介済みのレシピを再度載せておきましょう。


昭和六年一月一日発行 婦人倶楽部附録『西洋料理 支那料理』

PC030362-2.jpg


>「マカロニーのトマト煮」(口絵参照) (イタリヤン・マカロニー)

 これは日本の饂飩のやうに、お汁をかけてツルツルと頂くのではなくて、茹で上げ饂飩をバターで炒め、トマト・ケチャップで煮込んだものですから、日本の饂飩とは全然味も趣も違った料理です。

▽材料(五人前)

 マカロニー二十五匁(長さ七寸五分のものなら約二十本)、バター大匙一杯、トマト・ケチャップ大匙六杯位、玉葱半個、盬。合計三十銭位、一人前六銭。

▽調理

マカロニーは盬を加えた沸湯に入れ、中火で約三十分間盬茹とし、軟かになつた時笊に上げて水気を斬り、七八分位の長さに切っておきます。
 次にフライパンに大匙一杯のバターを入れて溶かし、荒こま切りの玉葱を入れてよく炒め、更にこれにマカロニーを入れて少し炒め、少量の胡椒及びトマト・ケチャップをくわへて程よく煮上げ、皿に取り分けて温かいところをすすめます。
 若しチーズがあつたらば、その温かい上にチーズのおろしたモノをふりかけて供するもよい。又少量の微塵切りのパセリをふりかけるも結構です。

<以上

いかがでしょうか?
チーズもパセリも登場して、私的には言う事なしです。(笑
少なくとも私が探している、昭和ナポリタンのケチャップ“技法”は既に存在しているのですよ。

じつは、カゴメのホームページによりますと、  

>トマトケチャップは徐々に売れ出した。1930(昭和5)年前後には生産量でトマトソースを上回り、1939(昭和14)年にはトマトソースの6倍近くにまで達している。
もちろん品質の向上もあるが、生産量がここまで伸びた最大の理由は、この時期に食の欧米化が一般家庭に急速に広がったためだった。
<以上

これは、1930年頃から、婦人大衆誌に料理記事と抱き合わせの広告を掲載していった事に関係が無いとはいえません。
案外と日本におけるナポリタンって、有名なフランスレストランなんかぢゃなくて、大衆婦人誌に記事を載せている料理研究家が広めたのかもしれないなぁ  なんてチョイと書いて置こうかな?(笑

このような記事を少しずつ掲載をして、日本の大衆洋食の歴史に少しでも興味を抱いて頂けたら幸いです。
日本の洋食って、フランスとイギリスから伝わり、有名なレストランからトップダウン的に大衆に伝わっていったような定説で、ぶった切るのは少々乱暴なんぢゃないかな?
なんて事も書いて置きたいです。
誰に書いてるって?   ムフフフ  内緒です。(笑


洋食は昭和初期には、大衆的な家庭にも伝わりだしていたんですね。

次回は、大正期の町洋食の活き活きした様子をお届けできたら良いな、なんて考えております。




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2012-12-12 : ナポリタンの“謎”を追え : コメント : 18 : トラックバック : 0 :
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非公開コメント

!!
ぎゃふん!
2012-12-14 08:26 : はってばって URL : 編集
なるほどぉ
>大衆婦人誌に記事を載せている料理研究家が広めたのかもしれない

ありうることですね。
今後の展開が楽しみです。  
2012-12-14 08:29 : 酔華 URL : 編集
ふむ ふむ なるほど。仮説を立て実証へと迫ると言う面白さを一緒に楽しませて頂きたいですね。次への発展を楽しみにお待ちします。
2012-12-14 09:17 : 相子 URL : 編集
なるほど ふ-んたいした推論だ ノーベル賞ナポリタンの部が有れば決まりだな
ウドンのトマト煮 さすが まさにナポリタン
スパゲティ-=イタリアうどんですからね
2012-12-14 13:15 : EGUTI YOUSUKE URL : 編集
深いですね~
読んだけど 難しいです
わたしの幼稚園の頭脳では 

スパゲッティはイタリアうどんですか?(笑)

2012-12-14 18:58 : maman URL : 編集
昔から料理って人々の関心事だったんですね。
たくさんのレシピが載せられているようなので驚きました!

すっかり馴染んでいる大衆洋食はひとつの貴重な文化ですね。
しっかり勉強させていただきます。
2012-12-14 19:02 : ちゅんご URL : 編集
Re: !!
> はってばってさん

ぁ… 本当に誰かに宛てた…訳では…f(^_^;
2012-12-15 14:28 : いその爺 URL : 編集
Re: なるほどぉ
> 酔華さん

明治、大正時代の料理研究家って何だか凄いですよ!
上手く書けると良いのですが…

ブツは近く運び込む予定です。

2012-12-15 14:31 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
> 相子さま

近いうちに、アメリカ西海岸旅行の特典が付きます。
御一緒に古きアメリカまで旅立ちましょうね。(^-^)v
2012-12-15 14:33 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
> EGUTI YOUSUKEさん

ノーベル賞より、出来ればEGUTI 賞を頂きたいのですが…f(^_^;

2012-12-15 14:45 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
> maman さん

スパゲッティやマカロニは昔の本では、饂飩ごときもの、西洋饂飩等と紹介されてるんですよ。
実際、饂飩でナポリタンを作ると、なかなか美味しいです。(^-^)v
2012-12-15 14:49 : いその爺 URL : 編集
Re: タイトルなし
> ちゅんごさん

明治、大正時代の洋食化は、富国強兵と言う国家的な思想から始まりますが、これは国民の意思でもあった様です。
強い国にならねば植民地になってしまう、そんな厳しい時代背景が存在します。
初期の料理書には、よく強き身体を作らねば御国の役には立てない なんて事が書いてあり、料理研究家も大きな意識を持っていた事が伺える気が致します。
2012-12-15 14:57 : いその爺 URL : 編集
トマト
なるほど饂飩ナポリタンをこうまとめられましたか…あっ、引用ありがとうございます。

しかし、歴史や史実を曲げるのはイカンのですが、正史のよく分からない隙間をいくつかのピースと想像力で埋めていくのは楽しい作業ですよね。
そんな中で、イロイロな可能性を追求しないで持論にこだわるのはつまらないと思うのですが…

実のところメインのストーリーより、砂糖やウスターソースをかけて食べるトマトのトコロが受けてしまったとも2でした。
2012-12-15 17:37 : とも2 URL : 編集
Re: トマト
> とも2さん

アハハ…持論にあまりこだわってはいないですよ。
私の持論は船員説なのですが、とうに飛び越えてしまい今やアメリカまで到達してしまいました。(笑
暫くの間、ピースを載せて行こうと考えています。

ピースを揃えてから、いろいろと言いたいこともあるんです。(^-^;
2012-12-16 16:19 : いその爺 URL : 編集
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-16 17:58 : : 編集
Re: いやいや
> 鍵コメさん

あっ!そうでしたか! 失礼しました。
そして、ありがとうございます。

論ずる事が出来ない、ナニカが存在している様です。
そんな所を、一つずつ解きほぐして行きたいと思います。
消費者や一般大衆って羊の群れって思われてるのかな?(笑
2012-12-17 10:24 : いその爺 URL : 編集
ロッパ日記
青空文庫に該当部分をアップした方が居るのね。
多謝!

http://www.aozora.gr.jp/cards/001558/files/52689_46623.html
2012-12-18 08:06 : はってばって URL : 編集
Re: ロッパ日記
>はってばってさん

先日神田に行ったとき、ロッパ日記買おうかと悩みました・・・
結果、お小遣いが足りなくて・・・買えませんでしたよ。(笑

ほんと感謝です!
2012-12-19 15:52 : いその爺 URL : 編集
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プロフィール

いその爺

Author:いその爺
横浜在住
五十路で早くも爺さんになちゃった。
“食”“写真”“郷土”が好きです。

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